ヘッドホンの選び方 - SRH440・ SRH840・ SRH940 ~エンジニアからのアドバイス~

■ 普段のヘッドホンから違和感なく移行できるSRH440

まず3種類を聞き比べて最初に思ったことは、普段スタジオ作業等をしているヘッドホンから違和感なく移行できると感じたのはSRH440。音像の近さや、楽器一つ一つの周波数構成、定位の広がり方、それらすべてが音楽製作用に作られているとすぐわかる。装着感も心地よく、ヴォーカル録音時に使用したが、ヴォーカリストによると高音域が痛いということもなく、歌いやすかったそうだ。SRH440は、よい意味で飾りっけのない正直な音。だから、録音、オーバーダビング時にはプレイヤーが 演奏しやすく、ミックス作業時はEQやコンプ等のダイナミクス系の調整の時に判断しやすい音。その反面、リバーブやディレイ等の空間系は後述するSRH840や940に比べると若干見えにくい感じは否めない。

■ 曲全体のバランスをとったり、空間系エフェクトを決めるときはSRH840

SRH840は、SRH440に比べると音像を少し俯瞰的にとらえている印象。すこし離れたところから音像を聞いている感じなので、ミックス全体のバランスがよくわかる。なにより使えると思ったのは、ハイエンドとローエンドが結構わかるところ。これは宅録環境でミックスする時には役立つ。実際僕も自宅で作業する時は、SRH440で楽器一つ一つの音を処理し、バランスをとるときや、空間系エフェクトを決めるときはSRH840と使い分けしている。ちょうどスタジオでニアフィールドや、ラージ、ラジカセとスピーカーを切り替えて作業するのと似た感覚。あと、いろいろなCDを聞くとき僕はSRH840で聞く。曲全体の雰囲気、各楽器のバランスや、曲全体の周波数バランスの使い方など、ちょっと俯瞰的に聞くからこそわかることがいろいろ見えてきて勉強になる。

■ かっこ良くきれいに心地よく音楽に身をまかせることができるSRH940

そうやってSRH440とSRH840を数ヶ月作業のなかで使っていた所に、SRH940がリリースされたので早速聞いてみた。手にしてみると、今までよりはるかに軽いし、柔軟な印象を受ける。装着感も高級感があってよい。音については、結果から言うと、音像の近さはSRH440と同じ感じだが、SRH440よりも情報量が多い感じがした。センターと左右の間の空気感がより鮮明に見えるので空間系のエフェクトもよく聞こえるし、左右の定位もSRH440に比べると広がったように聞こえる。なにより、かっこ良くきれいに心地よく音楽に身をまかせることができる。SRH940は、SRH440やSRH840等の製作用とは違い、リスニング向けの製品だと感じた。各楽器の中域が、少し整理されることによって、空間系のエフェクトが見えやすくなり、それによって左右の定位が広がって聞こえる。そんな風に感じた。これはこれで新しい音。このヘッドホンから音楽製作を始める人にとっては、これ一つで難なく録りからミックスまでできるのかもしれない。そんな風なポテンシャルを感じさせることができるヘッドホンだと思った。

 

■ エンジニアからのアドバイス

これからヘッドホンを購入する方は、まずSRH440とSRH940を聞き比べて自分が好きな方を購入するといいと思う。その際、いろいろなレコーディングの本を読んでいろいろなエンジニアの言っていることが理解しやすいのは(エンジニアリングをわかりやすく勉強できるのは)SRH440、エンジニアリングは少しわかっいて、後は自分で気持ちよく作業したいのであればSRH940が合うと思う。そして、そのヘッドホンでミックス作業をして、どのスピーカーで聞いても同じ印象にならないと感じたら、SRH840でミックスバランスを見直してみるのもいいと思う。そして、いろいろなCDを聞いて勉強したいときもSRH840がおすすめだ。

 

鈴木鉄也(すずきてつや)

MONEKY MAJIK、土屋アンナ、Spinna B-iLL、ブラックベルベッツなどの作品を手掛けるエンジニア。幅広い音楽への造詣に裏付けられた音作りは、ミュージシャンからも定評がある。 

ホームレコーディングおよびスタジオレコーディングやモニタリングに適したプロフェッショナル・スタジオ・ヘッドホン
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