音楽鑑賞用として理想的、耳にも心にも自然な音色 - KSE1500レビュー

KSE1500コンデンサー型イヤホン、及び KSE1500を駆動するDACアンプKSA1500のスペックと特徴についてはこのサイト(shure.co.jp)に詳しいのでここでは触れないが、KSE1500の音の良さは圧倒的である。

昨年の「秋のヘッドフォン祭り2016」に行った際に通りかかったシュアのブースで、「あ、KSE1500だ」と足を止めた。そうKSE1500は以前からひじょうに気になる存在だった。早速手持ちのA&K AK380と組み合わせて聴いた私は、一瞬にしてその素晴らしい音の虜になった。それまでイヤホンはいくつか所有してはいたものの、せいぜい旅行の時に使う程度。つまりイヤホンの出番は多いとは言えなかった。自宅ではリスニングルームはもちろん、リビングルームでも音楽はスピーカーで聴いていた。外出の際でも積極的にイヤホンを活用しなかったのは、つまるところイヤホンの音に馴染むことが難しかったからである。とはいえ新幹線移動や海外渡航時は時間を要するので、携帯デジタルオーディオプレーヤーはもちろん持ってゆく。だからイヤホンの良いところも理解しているつもりだ。細かい音がよく聴こえて、一人の世界に没頭することができるし音楽と一つになれる。さらに最近の製品はダイナミック型もBA型も、BA型とダイナミック型のハイブリッドタイプも本当によくなっていて、一昔前のイヤホンに比べたら隔世の感がある。

それでもイヤホンを積極的に使ってこなかったのは、結局のところ音が鼓膜の直近で鳴っているという、その感じに100%馴染むことができなかったから。音楽が頭の中で鳴ること自体はそれほど気にならないのだが、音が鼓膜に刺さってくる感じがやや苦手というか。ところがKSE1500にはほとんどその感じがない。空気のように軽く耳に優しい音なので耳のすぐ近くで音が鳴っているという違和感がない。イヤホンやヘッドホンの音は自然界の音とは音波の伝わり方がおよそ異なって極めてダイレクトだが、そのことに人間は多少生理的な違和感を覚える。ところがKSE1500にはほとんどそういった違和感がないところが素晴らしい。KSE1500の音は、空気のように軽く耳に優しいと書いたが、コンデンサー型ならではの超軽量振動板がその空気のように軽くて耳に優しい音を実現している。とは言え、考えればシュアがコンデンサー型イヤホンを実現したことも驚きである。技術的には極めて困難、いや実現不可能とさえ思えたハードルをいくつもクリアして、この素晴らしいコンデンサー型イヤホンシステムを完成させたシュアの技術力と執念には頭の下がる思いだ。

KSE1500の音は極めて軽くて速い。イヤホンやヘッドホンの音は、そもそも普通のダイナミック型スピーカーに比べるとずっと軽くて速いのだが、その中でもKSE1500の音は桁違いに軽くて速く感じられる。加えてKSE1500の音は精細かつ透明で、オーバートーンは豊かに漂い、音のエッジを隈取りすることなく、音の立ち上がりはローエンドまで含めて極めて俊敏。その結果音楽はたいそうニュアンス豊かに表現される。微かな気配まで含めて驚くほどニュアンス豊かという点に関しては、相手がダイナミック型スピーカーならどれほど優秀かつ高価なモデルを持ってきても決して負けないと思う。

KSE1500はAK380とはアナログ接続になるが、超高域まですっきり伸び切った鮮明な(でもギラついたところのない)音が楽しめる。これはAK380の音の特徴を正確に伝えるものだ。音源は私の場合ハイレゾで(D/AはAK380に任せるので)PCM 32bit / 384kHz、DSD256(11.2MHz/1bit)まで様々なハイレゾを聴いている。しかし、最近はデスクトップで楽しむことも多くなった。使い方はMac Book Proが1台だけ、これでOKなのだから驚くほどシンプルなオーディオシステムである。Mac Book ProとDACアンプのKSA1500をUSB接続。ハイレゾファイルの再生はMacにインストールしたAudirvana Plus2.5を使い、D/AはKSA1500で行うので96kHz/24bitまでの再生となるが、これで不自由はほとんどなくたいそう快適だ。もう一つMacではTIDAL(CDクォリティ=44.1kHz/16bit Flacによる音楽のストリーミングサービス)を聴いているが、今年(1月6日)になって突如ハイレゾストリーミング(TIDAL Masters)がスタート。現在は主に96kHz/24bit MQAでワーナー系の作品がサービスされるが、料金は据え置きだ。ハイレゾがストリーミング(月額19.9ドル)で聴き放題なのだから驚くべき時代が到来した。これじゃあ CDはますます売れなくなるなとは思うけれど、それはまた別の話である。

サウンドステージの広がりや奥行き、そして高さといったところはスピーカーでチェックするが、音の精細さやダイレクト感、細やかなニュアンスといったところはKSE1500で聴いた方がずっとよく分かる。分かるだけでなく、耳にも心にも自然な音色のKSE1500は、音楽鑑賞用としてこれ以上ないと思える理想的なイヤホンである。

和田博巳

1968年から2年間、新宿のジャズ喫茶「DIG」でアルバイト。その後高円寺にジャズ喫茶「MOVIN’」をオープン。
1971年、ロックバンド「はちみつぱい」にベーシストとして加入。
1986年からは音楽プロデューサー、そしてマネジメントオフィス設立。
1995年頃からオーディオ評論や音楽に関する記事を「ステレオサウンド」、「HiVi」等に寄稿。  

シュア・ ジャパン株式会社

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