モバイル機器との組合せに特化した優秀イヤホン - SE215 Special Edition レビュー

 本機の特色を端的に言うなら「モバイル機器との組合せに特化した優秀イヤホン」となる。iPodを筆頭とするデジタルプレーヤーやスマートフォンで音楽を聴く場合、(1)強く圧縮されて音質が粗くなった音源 (2)貧弱な品質の内蔵アンプ (3)リスナーを取り巻く物理的な雑音 の三重苦に悩まされる場合が多い。

 「再生音の情報量が多く、音のバランスがフラットで、小さな音の楽器まで繊細に表現できます」という優れたイヤホンを使ってみると、実地では前記の悪条件に足を引っ張られて性能を十全に発揮できず、スタンドアローンの唯我独尊に陥ってしまう製品が珍しくない。実際の使用場面に置かれると、単体として見れば優れたイヤホンであっても良い音を提供してくれるとは限らないのだ。

 先に述べた3つの悪条件に対処し「リスナーが得る最終的な再生音の改善を目指す」とする現実的・実用的な狙いがSE215 Special Editionを生んだーーというのが筆者の見立てだ。本機を含むSE215系はシュアのイヤホンには珍しくダイナミック型ドライバーを搭載し、薄く粗く平板になりがちな圧縮音源にコクのある立体的な表情を与えている。

 加えて本機では、モバイル機器での音楽再生にありがちな低音の力感不足を解消するために低域を適度に持ち上げるバランスを作り、リスナーの満足度を高めた。ただし、低域をアシストするといっても近年流行の爆音タイプではなく、元の演奏を尊重する節度が伺われる。

 さらにシュア製イヤホンの伝統となっている高度な遮音性能は本機にも具わっており、リスナーの周囲から来る雑音を頑強にブロックしてくれる。筆者の判断基準によれば、遮音性が優秀すぎて歩行中のリスニングには不向きだ。おとなしく座って聴く方が良い。

 ここで述べたようなSE215 Special Editionに盛り込まれた特色は、ポータブル再生機器にイヤホンを直差しする場合に最大の効果を挙げる。つまり、本機は「普通のリスナーが普通にアウトドアで音楽を楽しむ」という使い方に最適化したイヤホンとして企画されたと考えられる。

 高スペックの音楽ファイルを高級ポータブルプレーヤーに収め、別付けのDACやヘッドホンアンプの二段重ね、三段重ねで武装しているマニア諸氏は、先に挙げた悪条件の(1)や(2)を既に免れているのだから、筆者は本機の使用を奨めない。むしろイヤホン単体で性能が完結しているSE215のオリジナル・モデルを使うべきだろう。

佐藤 良平氏

1964年、秋田市生まれ。文筆業。過去30年間、オーディオによる音楽再生の品質を主にパッケージソフトの側面から追究し、ライナーノートやレヴューを執筆。古くからのヘッドフォン中心主義者でもある。

座右の銘は「スピーカーはヘッドホンの不完全な代用品である」「プレーヤーやアンプはヘッドホンを鳴らすための周辺機器に過ぎない」。実を言うとシュア製イヤホンを日常生活で使うのはSE215 Special Editionが初めて。

シュア・ ジャパン株式会社

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