SE535 について語る – エンジニア・オーディオライター岩井喬氏

シュアのカナル型イヤホンとの出会いはE5cであった。本機と同じくバランスド・アーマチュア型ドライバーを複数用いた高級モデルであり、イヤホンタイプで5万円以上もする製品とは初めて対峙したのだが、なにより感銘を受けたのはキックドラムのアタック時である。空気抜きの付近で聴いているかのような、重くないキレ良い押し出し感は、それまでの製品では味わったことがなく、まさにステージ上のモニターである所以を体感できた瞬間だった。

続いて、前モデルのSE530はユニットが3基となったこともあり、圧倒的な全帯域での押し出しの良さが特徴となっていた。深みのあるサウンドはモニターらしい実直さを持ちながら、E5cでも感じたパワフルさも持ち合わせており、装着しやすいフォルムを採用している点が優れていた。

そして登場した最新モデルのSE535であるが、使い勝手の面ではケーブルが着脱できるようになったことでメンテナンス性が向上し、断線などのトラブルでも迅速にケーブル交換だけですむため、さらに長期間製品を愛用できるようになった。

サウンドはより緻密で全帯域バランスの取れたものとなり、従来モデルと比較して落ち着きさえ感じさせる。複数ユニットタイプでは個々の音の繋がりが重要となるが、SE535では非常にスムーズなトーンとなっており、クセも少なくプロ用モニターとしても充分使える。

しかし、どんな音源であってもまとまりよく音の芯に対してフォーカスしてくれるので、ポップスやロックのようなヴォーカル中心のものであれば、すっきりと声を浮き上がらせ、バックバンドも精密に一つ一つトレースしつつ、音楽的なハーモニーを失わない。聴きたいポイントがすぐ見えてくるような、正確なサウンドの持ち主といえよう。

岩井喬(いわいたかし)

エンジニア・オーディオライター
東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める

シュア・ ジャパン株式会社

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