精密なドライバー構造とプロ用モニターに使用できる音の再現性 - SE846レビュー

ヘッドホンファイルが急激に増えてきた、この10年の記憶を振り返ってみると、各メーカーも従来の技術を飛躍的に進化させ、次々とヘッドホンとイヤホンのニューモデルを登場させていることが分かる。私は、音もさることながら、内部技術に、こだわったモデルが好きで、ついつい、搭載する技術を調べてしまう。また、仕事がら、いろいろな再生プレーヤーの音を聴くし、ハイレゾ音源のマスタリングなどの音づくりも探りたくなる。

そんなわけで、モニター用のヘッドホンでは、シュアのSHR1840は、色づけが少なく、解像度も高く、十分な空間性が得られるので、現在気に入って使用しているところ。ではイヤホンはどうかというと、SE535が高解像度で色づけが少なく、気に入っている。

こうしたなかで、今回、SE846を聴く機会を得た。実際に試聴して驚いたのは、愛用のSE535を遥かに超えた、ストレートで、音源に存在する空間や演奏のさまを、くまなく描く解像度の良さである。音量を上げた時の歪み感の少なさも格別であった。

スピーカーユニットで言えば、低域から高域までフラットな、理想的なフルレンジユニットのようなイメージだ。そして内部技術も高域、中域に加えて2基のBDによる低域マイクロドライバーを備える素晴らしい内容だ。これらはイヤホン内部のドライバー・アセンブリー・ユニットに内蔵されているが、非常に感心するのは、低域マイクロドライバーの発する低音をナチュラルに中域方向に減衰させる方式だ。(ロールオフする。)

これは、低域が10枚の極薄のステンレス板を重ねた、長く、渦を巻いたようなローパスフィルターを通過することで実現する。資料によると、75Hzからロールオフし、90Hzでは3dB、250Hzでは10dB減衰するとのこと。最終的には、高域と中域のマイクロドライバーから発せられた音と合流するが、これにより、広帯域なフルレンジユニットのような再生を可能にしているのだ。

実に独創的な技術であり、素晴らしい。ネットワーク回路の精度の高さも感じることができるのである。さらに、音を耳へ放出するステンレスノズルの手前には、脱着式チューブフィルターを装備。標準装備のニュートラルな音のチューブフィルターのほかに、2種のチューブフィルターが付属され、ブライトな音、ウォームな音へと好みに応じて、音質が変更できる。

こんなイヤホンは、過去に類を見なかった。実際に試してみると十分な効果を発揮しているのである。高価ではあるが、これだけの技術を良くこのイヤホンのなかに搭載できたと思うと同時に、超高精度な製作にも感心するのである。

このように、SE846は、まさにヘッドホンファイルが楽しめるハイエンド・イヤホンであり、ハイレゾ時代のプロフェッショナル・モニター・イヤホンにふさわしいモデルと言えるであろう。

角田郁雄(つのだいくお)

1953年北海道札幌市生まれ。音楽とオーディオを愛好する父の影響を受け、中学生ころからオーディオに興味を持つ。もともとセールスエンジニア的な仕事を経験してきているので、物の原理や技術を追求してしまうタイプ。

オーディオブランドの音、背景にある技術、デザインの魅力を読者に伝えたいと執筆活動を始める。録音エンジニアとしてクラシック音楽の録音にも携わっている。

シュア・ ジャパン株式会社

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